50代、おばちゃん福祉職員の雑記帳

福祉の仕事に携わってまだ3年、面白いこと難しいこと、まだまだいっぱいです。

映画「プラン75」の感想

こんにちは。福祉職員のおばちゃんです。

本編を観た後も、予告動画を何度も繰り返して見てしまう。

「プラン75」必見です。

おばちゃんはブログに映画の感想を載せる時、鑑賞していない方のためにネタバレは書いてきませんでした。しかし、今回の映画はあらすじをすべて書いたとしても、このテーマと役者さんたちの表現力の奥深さに誰もが引き込まれるであろうと思い、ちょっと突っ込んだ感想を書きたいと思いました。

 

あらすじ

「満75歳から生死の選択権を与える制度『プラン75』が国会で可決・施行された」日本。この制度に人生を左右される人々を、「対象者」と「施行する側」「その間に立つ人間」といった様々な立場で描いている。

高齢を理由に、ホテルの客室清掃の仕事を解雇された角谷ミチ(倍賞千恵子)。プラン75の加入を検討し始めた彼女は、市役所のプラン75申請窓口で働くヒロム(磯村勇斗)や、コールセンタースタッフの瑶子(河合優実)と出会っていく。一方、フィリピンから単身出稼ぎにきた介護職のマリア(ステファニー・アリアン)は、娘の手術費を捻出するべく、プラン75関連施設に転職するが……。

 


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感想を書く前に、実際の日本の背景を考えてみましょう。

厚労省による男性の平均寿命81.4歳、女性は87.5歳。

日本は今、世界最速の超高齢社会に突入しています。

はて、世界最速とはどういうことでしょう。

比べてみないと現実感がわきませんね。

 

国の総人口のうち、65歳以上の高齢者が占める割合を高齢化率と言います。

7%以上14%未満を高齢化社会

14%以上21%未満を高齢社会

21%以上を超高齢社会と分類されます。

昭和45年の国勢調査で7.1%となり、平成6年には14.5%、そして平成27年には26.6%、となりました。

このスピードが世界に類をみないのです。

高齢社会の移行にフランスは100年以上、ヨーロッパで最速だったドイツでも40年を要しています。

世の中が不安定になりますと、煽りをくうのはいつも弱者です。

国民全員が平等に痛み分けしましょう、と税金が上げられました。

正規雇用制度は富裕層と貧困層の経済格差を大きく広げていきました。

昭和の時代は普通に結婚して普通に子供を産む、という普通であったことが普通のことではなくなり、貧困層にはハードルの高いものになり少子化に拍車がかかりました。

おばちゃんが学生だった頃は、

日本国憲法基本的人権の尊重」~すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する

という教科書に載った三大原則を信じていましたが、今や「それはどこぞの国の話や?」という状況です。

政治家は国民のために働いていると思っていました。

「自分たち富裕層だけ生き残るような政策をとるわけがない、国民が一生懸命真面目に働けば、救済のための政治をしてくださるに違いない」

そんなおめでたい(おばちゃんだけかもしれないけど)思考で、世のため人のため頑張れば報われるもの、と素直に信じて生きてきたわけです。

しかし。

 

市民が休むベンチさえ取り上げました。

映画の中でも短く、しかし鋭く切り込んでいます。

磯村さん演ずる行政職員が、いかに座りにくく休むことが困難なベンチにするか、素材を選ぶ場面が出てきます。

富裕層の人たちにとって高齢者や貧困層の人が公園で休む姿すら見たくない、景観の邪魔なんだよね、という意思表示。

なぜそんな冷たい仕打ちができるのか。

その政策を施行するのは役人です。運転手付きの車で、ドアからドアの移動。そもそも彼らにはベンチなんて街に必要ないのです。

税金は国民全員が平等に痛み分けしましょう。

そう言いながら弱者からもまんべんなく税金を徴収し、そして弱者が休むところは与えない。

そこへコロナが追い打ちをかけ。

ふと、気がつけば。

老人と子どもと貧乏な若者に厳しい世の中になっていました。

 

毎週のように、人身事故で電車が止まります。

電光掲示板にそれが表示されるたびに、おばちゃんは悲しい気持ちになります。

未来に希望が持てないこの国でどうやって生きていったらいいんだ!

もう頑張れないよ!

無言の叫びが聞こえるような気がします。

 

相当前置きが長くなりましたが、あらためて映画の話。

早川監督は「自己責任論がはばをきかせている日本の社会において、社会的に弱い立場にいる人々への風当たりが強く、どんどん不寛容な社会になっていっていると感じていました」と語っています。

 

そんな監督の思いが倍賞さんのカメラを見つめる表情に見事に表現されています。

おばちゃんが一番好きなシーンは、コールセンタースタッフの瑶子(河合優実)さんが、倍賞さんに電話でプラン75の最後の説明をするところ。それから休憩に入った河合さんの背後で、新人スタッフにプラン完遂のための誘導の仕方をレクチャーしている中年女性の声が聞こえた時の河合さんの表情、これがとてもよかったです。

磯村優斗さんの演技も、困惑と歯がゆさ、もどかしさ、悲しみと哀しみ、腹立たしさ、いろんな感情がまざったその表情がとても素敵でした。泣いてないのに泣いているかのようにこっちが泣けました。

 

人は必ず老います。

今の高齢者の現実を見て、若者たちは自分の将来を思い浮かべるはずです。

自分も遅かれ早かれこうなる…

自分はこんな風にはならないと、お金をせっせと貯めている方もいるでしょう。

けれど平均寿命と健康寿命との差は、男8年、女12年です。寝たきりの12年間、いったいどれぐらいの貯金があればいいのでしょう。

お金ももちろん大切ですが。

社会が弱者に優しくおおらかに、みんなで助け合っていくのが当たり前の、安心して暮らせる日本になるように考え方を変えていきましょうよ。

と、この映画のラストシーンは語りかけているような気がしました。

 

とても良い映画だと思いますので、

お時間がありましたら是非ごらんください。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

では、また!